きっかけは、 『かるた藤沢百趣 』という本同好会手作りの冊子に興味を持っていただいたことから取材を受けました。
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季節を感じる、歴史を紡ぐ、ことばで遊ぶ「籐稲言葉遊びの会」
月に一度、俳句や短歌、自由連歌など、ことば遊びを楽しむ『藤稲言葉遊びの会』にお邪魔しました。
きっかけは、 『かるた藤沢百趣 』という手作りの冊子を見せていただいことから。
『かるた藤沢百趣 』 には、藤沢の街や歴史、人々の様子などが100の歌となって描かれています。
藤沢を知る人であれば、「うん、わかる!」「あの場所だね」「懐かしいな」そう言わずにはいられません。
どんな人たちが作っているのだろう? どんな風に出来上がったのだろう?
と興味津々。
早速、 『 藤稲言葉遊びの会』 を訪ねることに。
「藤稲言葉遊びの会」とは?
『藤稲言葉遊びの会』は、学部を問わずさまざまな年代の早稲田大学出身者が集まり、その名の通り“言葉遊び”を楽しむ会。型にはまった俳句・短歌にこだわらず、自由に遊び方を設定し、言葉遊びを楽しんでいます。
この会が始まったきっかけについて、代表の三潴信道さんに伺いました。
「藤稲言葉遊びの会は2015年に私が言い出しっぺでスタートしましたから、もう6年になります。スタートに当たって私が代表を勤め、宮原昭夫先生を会長にご就任願ったもので、現在もそのままの形になっています。」
宮原昭夫先生といえば、1972年 「誰かが触った」で第67回芥川賞を受賞された作家であり、2016年に「コンビニ人間」で同賞を受章した村田沙耶香さんの師匠でもあります。
俳句の世界は何となく分かるけれど、正しいルールも分からないし、季語も知らない。こんな私が来てしまって良いのだろうか?ちょっとドキドキ!!
10月のお題は、俳句「秋の果実」と「秋の行事」
今日のお題は、俳句「秋の果実」と「秋の行事」。
まずは、一人ひとり作ってきた句を書いていきます。
栗や柿、あけび、ざくろ。秋を表現する美しい言葉が並びます。
「杏花、こぶし、遊蛙、なまこ、喫茶去、って面白いでしょ? みんな俳号が決まっているの。」俳号? 俳号を知らなかった私。
俳人として用いる雅号、つまり俳句を詠むときに使う名前なんですね。
全員の俳句が書き終わるまでの自由な時間。会話も弾みにぎやかな笑い声が響きます。
そして、ずらりと並んだ俳句「秋の果物」がこちら!
子供の頃、栗が大好きで、特に丹波栗は甘くて美味しかった。そんな子供の頃を思い出して詠んだ句。
小布施町 岩松院で見上げた龍図。グッと睨みつけるその目が印象的だった。旅の記憶を詠んだ句。
小さい頃、裏山に入ってあけびを見つけて食べた。色鮮やかな景色が目に浮かぶ句。
5・7・5で17音という短い言葉なのに、その言葉のなかには懐かしい風景や思い出がどこまでも広がっていきます。
最近の出来事を詠んだ一句も。
「蜘蛛の巣に顔を嬲られる」
この時期の蜘蛛は真ん中にいなくて蜘蛛の巣が空家になっている。その蜘蛛の巣は何十にも重なっていて、目が悪くなった自分には見えにくい。そこをうっかり通ってしまうと「やめてよ!やめてよ!」と手で掻き分けても、蜘蛛の巣が顔にまとわりつく。その状況を“顔を嬲られる”と表現した言葉選びが秀逸です。
続いて、「秋の行事」の句。
一つずつ見ていくと自分の思い出と重なって、その瞬間に見ていたものや聞こえていた音がよみがえるようです。懐かしいなぁ、とちょっぴりノスタルジックな気分になりそうですが….思い出にどっぷりひたっている暇はありません。
「松茸狩りは関東だと上田が有名でしょう」「郁子は百人一首にも登場しますね」「松本市を訪問するツアーは良かったですよ」
ひとつの俳句をきっかけに、話題は色んな方向へ変化していきます。経験の豊かさと知識の深さがあるからこそ楽しめる、まさに言葉遊びですね。
「その人の人生が見えるでしょう?」と語ってくれた幹事の田中雄一さん